アクションスター・シミュレーター 「アンチャーテッドコレクション」

あぁクソッ!マジかよ!ウソだろ!

というセリフを1年分聞けるゲーム「アンチャーテッド」シリーズ初期三作セット「アンチャーテッドコレクション」がフリープレイになっていたので急遽PS+に入り直して早速プレイしました。

プレイモードはノーマルで難易度はプロ。ゲームが下手なやつに限って最高難度を選びがち(うらしま調べ)。

「プレイする映画」

いきなり余談なんだけど、自分はアンチャーテッドのことをそのイメージビジュアルの印象から広大なフィールドを自由に探索して自分なりの戦いかたができる!みたいなゲームだと勝手に勘違いしていたんですよ。

でも実際はもちろんそうじゃなくって、このゲームはステージクリア型のアクションアドベンチャーであり、売り文句を引用すれば「プレイする映画」だ。

そう、確かにそんな感じだった。主人公の冒険家ネイサン・ドレイク、通称ネイトは考古学と語学に優れ、勇敢で、タフで、向こう見ずでありながら頭がキレる。そんな彼が歴史の陰に隠された巨大な宝を追って未踏の地に踏み込み、悪の組織と対立し、窮地に立ち、それを切り抜け、最後にはハッピーエンド。そんな彼の冒険活劇をプレイヤーが共に体験する、なるほど確かにプレイする映画じゃないか。

…いや待て待て待て、そんな事を言い出したらストーリーを追うタイプのゲームは全部プレイする映画にならないか?

物語を体験させたいならサウンドノベルでもいいし、映像も伴わせたいならヘビーレインやデトロイトビカムヒューマンみたいな手法もある。こういった手段の方がプレイヤーを物語に集中させやすいし、行動をコントロールしやすいし、マルチエンディングな点でも映画をプレイするという表現にふさわしいような気がする。

一方でアンチャーテッドはアクションアドベンチャーで、物語を追うこと以外にも探索や戦闘にも力を入れなくてはならない。しかもエンディングはひとつ。このようなゲームで「プレイする映画」を謳う必要ってあるのか?

そう、それを成し遂げてしまっているところがアンチャーテッドをアンチャーテッドたらしめている核。アンチャーテッドは違うアプローチで「プレイする映画」を作り上げているように感じたんだよね。

台本通りに、鮮やかに。

このゲームをプレイしている間、な〜んか違和感があったんですよ。

その根っこはきっと窮屈さ。昨今のアクションゲームはいろんな面で自由が高まっていて、各々のプレイヤーがそれぞれに工夫を凝らして独自の攻略法を編み出すのが主流になっているように感じます。が、アンチャーテッドはその点が薄いんです。


このゲームの探索は一言で表せばパズルなので攻略法はひとつ、イベントが起きればそれに対処する方法もひとつ。ここまでならよくあるハナシだし、ちょっと昔のゲームだからそんなモンだよね〜で済みそうなところなんだけど、アンチャーテッドでは基本的に戦闘にまでもある程度決められた手順が存在します。


例えばこのゲームでは身を隠す行動があり、ステルスキルが可能。となれば敵の目を掻い潜って先へ進むことも出来そうに思えますが、実際はそういうワケにはいきません。

特定の敵を倒せば全ての敵が戦闘モードに入ることもあるし、たとえフィールド上の敵を全てステルスキルしたとしても物語が進まず、銃を乱射するなどして出演予定だった敵を呼び出して撃ち合わなければならないこともあります。

それだけじゃない。クリアリングしながら進んでも背後から敵が出てくるなんてザラ。あるポイントを超えると敵が生えてくるのも普通。まるで撃って撃たれてのハデな銃撃戦をすることが予め決められているかのよう。

いや、そう!そうなんだよ!決められているんだよ!アンチャーテッドは「プレイする映画」であり、この映画には「台本」があったんだよ!そう考えると違和感は一気に晴れていきました。
ネイサン・ドレイクはゲームの主人公ではなくてアンチャーテッドの主演俳優なんだ。彼に求められるのは優秀なソルジャーやアサシンのように淡々と仕事をこなすコトじゃあない。時に崖から崖へ飛び移り、時に無謀な戦いに挑み、時に銃弾の嵐にさらされて血を流しながらもそれを力強く乗り越える。そんな画面映えするアクションスターの立ち回りだった。

それをソルジャーになろうとしてプレイしていたから違和感があった。アサシンになろうとしたから窮屈に感じていたんだよ。目指すところはもっとこう、ブルースウィリスとか、ドウェインジョンソンとか、それこそハリソンフォードとか、そういう人たちなんだよね。


だからアンチャーテッドはネイサンの勇敢さを引き立てるスリリングなシチュエーションを山ほど用意してくれている。道なき遺跡の探索もそう。追ってくる車にマシンガンを乱射したり、トラックを飛び移りながらバギーを破壊したり、そんなイベントはしゅっちゅうだ。

ハデな撃ち合いもその一環。頼りない壁にギュウギュウと身を寄せて、手だけを出して無闇やたらにハンドガンを撃って手近な敵を倒し、そいつからライフルと手榴弾を奪って反撃に転じるなんて、映画で見てたら手に汗握るでしょ。そんな見えない台本が用意されてるんだよ。

プレイヤーが考えるべきはどうやったら被害を抑えてこの場を凌げるかじゃあない。どの敵からどうやって倒していけばこのシーンを成立させられるのか。このシーンにはどんなギミックが用意されているのか。そういうコトだったんですよ。

それを後押しするかのようにこのゲームはリトライが素早く、チェックポイントも多いのでNGカットを恐れる必要はない。何度もアクションがかかるうちに動きはどんどん洗練され、最後には映画史にのこるような素晴らしいシーンが撮影できちゃっているってワケ。

これは言ってみればアクションスター・シミュレーターだ。プレイヤーはネイサンを通してアクションスター気分をたっぷりと味わうことができる。


そこにシューティングのスリルと謎解きとスケールの大きなストーリーが加わることで、ある時は俳優ネイサンとして、ある時は戦士ネイサンとして、ある時は冒険家ネイサンとして、またある時は劇場でスクリーンを眺めている観客のような気分でと、多角的な魅力が渾然一体となって楽しめちゃう。

そんな欲張りな楽しみが詰まっているのがアンチャーテッドなんだなと、そんな風に感じました。

その他の魅力

そんなアクションスター的アクションの他にもアンチャーテッドには多くの魅力がありました。

自分が気に入ったのは仲間との小気味いいやりとりとネイトの独り言。いかにもなセリフ回しが映画な雰囲気をビンビンに高めてくれちゃっています。

それと色使いも気に入った。PS3時代のグラフィックに力を入れたゲームってくすんだ色を使いがちだったり暗い場所が中心になりがちだったりするんだけど、アンチャーテッドは実にビビッド。冒険活劇の雰囲気や物語のノリにピッタリだと思いました。

色の使い方といえば、ダメージを画面の彩度で表現しているのも面白い。このゲームは画面上に表示される情報がものすごく少なく設計されているんだよね。これもプレイする映画を謳うゆえの拘りなのでしょう。

作品別ひとこと感想

アンチャーテッド エル・ドラドの秘宝

記念すべき第一作だけど、正直なところあまり面白くない。

マップ作りがイマイチで探索パートはかなり退屈で冗長。3Dのゲームではあるがそうする必要を感じず、2Dの横スクロールゲームにそのまま落とし込めそうなチープなマップの連続。

ただただ煩雑なだけで目的が見えにくく、新たな道を探しているというよりもどうすればゲームが進展するフラグが立つのかを探している感覚。むしろ2Dの方が簡潔で分かりやすく、ゲームの魅力を引き出せたんじゃないかとさえ思いました。


でもそんな点さえどうでもよくなるほど辛いのが戦闘パート。一言で言えば理不尽。酷さをひとつひとつ挙げていったら枚挙に暇がない。

敵がニュータイプなのか、カバー状態で移動してもこちらの位置が完全に把握されている。登場してから特定の位置に配置されるまでは無敵。カバーしてても正面からの攻撃に当たりまくるといった具合に基本的なところからまずおかしい。

そんな中でもウォータークラフトに乗るステージの酷さときたらもう、爽快感も無ければスリルも無く、操作性も著しく悪ければ見栄えも悪い。ここにアンチャーテッドの良さは微塵もありません。

終盤に突然出てくる怪物の工夫の無さにも呆れました。ビジュアルも動きも鳴き声も、何も考えていない洋画が「人型のクリーチャーといえばコレさ!HAHAHA!」みたいなノリで出してくるモンスターそのもの。


そもそもこの作品は戦闘が多く、どんな冒険をしてたか思い出せなくなるほどとにかく銃を撃ってばかり。冒険をしている感覚は後半になればなるほど急激に薄まっていきます。戦闘が多いといっても後続の作品にあるような魅せる戦闘シーンは少なく、そのようなシーンはカットシーンで済まされてしまうのも痛い。


というワケでこのゲームは台本が悪い。B級映画あるあるを詰め込んだウケ狙いの凡庸なアクションゲームに落ち着いてしまっている印象で、アンチャーテッドとして完成しているとはとても言えないものです。完成度は50%くらいかな。半分だ。半チャーテ

もしもこれ単品でプレイしていたら続編を遊ぶ事は決して無かったでしょう。コレクションをフリープレイにしてくれて本当にありがとう。

アンチャーテッド 黄金刀と消えた船団

前作から約2年、この間にノーティードッグ社に何があったのか!冒険パート・戦闘パート共に前作とは別物と思えるほどの出来栄え!今遊んでも色あせない名作アンチャーテッドここにあり!


そうは言ってもやれることは何も変わっていない。アクションは全くと言っていいほど同じ、冒険でやることもかわり映えしていないんですよね。

それなのに格段に楽しくなっている要因としては戦闘が改善されたのはもちろんのこと、前作ではカットシーンで済ませがちだった劇的なシーンの多くをプレイヤーに委ねたことも大きいでしょう。

物語も緩急のメリハリがつき、その舞台も前作がほとんどジャングルばっかりだったのが市街や寒冷地などバリエーションに富んでいて目にも楽しかった。

演出の面でも大きな進化を遂げている。特に今作は恐怖を煽る演出が特にウマい。雪山であの怪物の存在を匂わすあのシーン、プレイした人なら頭から離れないんじゃないだろうか。


上で書いたような魅力も一通り揃っており、この作品でアンチャーテッドとしての面白さは確立されたように感じます。

ただ、この作品だけ操作方法の説明がほぼ無いのが難点。あんまり面白くない初代をやってて良かったと思えたポイント。あと、ラスボスがめちゃくちゃに強い。三作中ぶっちぎり。難易度下げようかと思った。

アンチャーテッド 砂漠に眠るアトランティス

冒険の舞台はついに時を越え、ネイトの少年時代も遊べちゃう。もちろん時を越える以外にも冒険の舞台はさらに広がり、船や飛行機にも乗れちゃうぞ。まぁ、ロクなことにはならないんだけど。

今作は物語の毛色が少し違うのが特徴だ。大きな山を追うというよりもネイサンのルーツを辿るようなもので、敵組織も彼をジワジワと追い詰めるようなやり方で来るところに新鮮味を感じました。

システム面では掴む事ができる壁がかなり分かりやすくなったのがありがたい。遺跡の調査で詰まっていると仲間がヒントを出してくれる頻度が高いのもうれしい。

レベルデザインにもかなり力が入っているように感じられて攻略しがいがあるのですが、斜めになっている地形ではカバーアクションが機能しないというちょっとマズい一面もありました。

が、総合的にみれば全体的に順当な進化を遂げている素晴らしい作品です。これまでの総決算的な話なので初代をやっててよかった。あとラスボスは弱い。

おわり

一般的なシューティングとしての面白さとか、プレイの幅の広さとか、そういった点ではイマイチだったかもしれない。

でもこのゲームほどシネマチックなアクションを楽しめるゲームはそうそう無いし、それに加えて謎解きや規模の大きなストーリーまで備えているものとなればこれはもうアンチャーテッドしか無いでしょう。

この独自のノリに乗って映画の撮影に挑む俳優のような気持ちで遊べば、きっと辛いシーンも乗り越えられるでしょう。いやもう難しいところはマジで難しいけど。自分は全作品で200回ずつは死んだけど。ネイトの口癖がうつるけど。

まぁそれもひとつのSIC PARVIS MAGNA、偉業を成すのも小さな一歩からってやつかな。

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