謎解きホラーなおとぎ話 「ルカノール伯爵 (The Count Lucanor)」

たまに来ませんか?怖がりたいという衝動が。

ホラーゲームがやりたい。でもちょっと待って、妙なバケモンを撃ったり斬ったりじゃないやつね。そんで急がなくていいやつ。じわっと怖いやつがいい。

そう思って手元のSwitchで検索をかけた自分を暗く、怪しげで、謎にあふれた世界に引きずり込んだのが本作「ルカノール伯爵」でした。

ということで今回は「ルカノール伯爵」の…なにこれ、紹介?感想?です。

あらすじ

貧乏なりに幸せに暮らしていた少年ハンス。

しかし10歳の誕生日におもちゃもケーキも買えない貧乏ぶりにシビレを切らして家出、冒険の旅に出るのでした。まったく年頃の子供は難しいな。そんな彼を心配しつつも家にあるお金や食べ物を全部持たせてあげる母の愛に心が痛む。

かくして近くの森や山の冒険を始めたハンスでしたが、いつの間にやらあたりの光景がおかしくなっていることに気がつきます。変わり果てた世界に戸惑い、凶暴化した動物に追われ、謎の精霊を追いながらたどり着いたのは「ルカノール伯爵」のお城でした。

ここで彼はとある「儀式」を成功させることで莫大な資産を得るチャンスを掴みます。貧乏にウンザリしているハンスはお金持ちになることができるのでしょうか。それとも…。

おもしろポイント

狭い視界

目を塞がれるのは誰だって怖い。

なんたって視覚は五感が収集する情報の8割を占めるとも言われているくらいだし、ゲームに限ればその重要性はさらに高まるワケですよ。

そんでこのゲームはそこんトコをグイグイ刺激してくれる。

なんたってこのお城は基本的に真っ暗で、いくら目を見開いても見えるものは画面に反射した自分の顔だけ。暗すぎ。

それを解決してくれるのが「ロウソク」。その小さな炎が照らす範囲だけを頼りに歩を進める冒険は本当にスリリング!
そこに「攻撃手段が一切ない」というのがこれまたよく噛み合っているんですよね。

戦えないからどうにかやり過ごすしかない、そのためにはなるべく多くのロウソクを置いて見える範囲を広くしたい。しかし置きに行くこと自体がリスキー!

敵だけではなく仕掛けも厄介だ。こちらは見えてさえいれば簡単に回避できるものが多いのだけれど、この視界の狭さによってかなり近付くまでわからず、なおかつマップの全体像が掴みにくいのでひたすら不安を抱えながら探索をするハメに。

こんなカンジで「視界の悪さ」をうま〜く活かして恐怖を煽ってくれるのがとてもポイント高いです。

また、ロウソクを置きながら冒険することで徐々に安心感というか、城を制覇してる感が増していくのも気分がいい。ドットは荒くてもシステムは高精細だ。


余談だけど、Switchのダウンロード版販売ページには道しるべの「キャンドル」ではなく「キャンディー」と誤訳されている。アマイノ!

セーブ制限

で、その安心感を無に帰す要素もある。それはゲームオーバーだ。そりゃそうだね。

再開は最後のセーブ地点から。そしてセーブには「金貨」が必要。しかしそれは攻略に使うアイテムを購入するのにも必要で、そうそう気軽にはできない。これがまたポイントなんだよね。

セーブが制限される面白さはバイオハザードなんかでも証明済み。もうちょっと進めそうかな。いや、やっぱり今セーブしておこうかな。その前にあっちの部屋だけ見てこようかな。

世界樹の迷宮なんかじゃこうなったらセーブ一択なんだけど、こちらでは次の金貨がいつ手に入るのかもわからないので実りの少ないセーブは避けたいところ。

そうやって渋ってるとえらい巻き戻されちゃったりするんだよね〜。移動速度が遅いのもあってゲームオーバーはかなり重いペナルティ。セーブしなきゃ…セーブを…。そう追い込まれながらのプレイはなおさらスリリング。

そんな理由もあってなかなか中断しにくいんだけど、Switchだとスリープ機能でとりあえず中断できるのが良かった。

謎解き

恐怖体験の他にキモとなる謎解きもベーシックなものからイジワルなもの、このゲーム特有のものまで多種多様でマンネリせずに楽しめました。全体的に難易度はひかえめで頭の体操ってカンジ。

ルールも簡単。部屋に入って宝箱を開ければいい。なんとわかりやすい。手に入れた様々なアイテムを駆使する攻略はゼルダっぽい手触り。

アクション性はほぼゼロなのでただただ謎解きだけに集中できるのもいいね。ゴロゴロしながらのプレイも余裕です。

じっくりと怖がろう

とにかく怖がらせ方が丁寧なのが好印象。豆腐の形がキッチリ残ってるピリ辛麻婆豆腐みたいなゲーム。バーン!とビックリするような怖がらせかたをしてこないタイプのホラーを楽しみたいなら特にやってソン無し。

コロコロと展開していくストーリーや状況の変化ももう一口、あと一口とプレイを促してくれる。グッドエンドっぽいエンディングには面白い仕掛けもあり。プレイ時間はじっくりやって5時間程度だったかな。


気になるのはちょっといただけない日本語化。わりとゴリ押しが効く。それとゴア表現が安く感じたかも。

特に三つ目はちょっとね。視界の不自由さによる恐怖だけで十分戦えてるのに変にダラダラと血を流したり欠損させても不純物に感じてしまうし、そういったものを見慣れてしまって危険に対する警戒心のようなものが逆に削がれてしまうような感覚がありました。そもそもグラフィックが荒いドットだからゴア好きの人には物足りなそうだし、あまり効果的では無かったんじゃないかな。

あとプレイ開始直後は移動速度が異常に遅く感じるけど、本編に入れば適切な速度だったと思うのでココに関しては問題なし。だからどうか城にたどり着く前に見切りをつけないであげてほしい。


と、そういう気になるところはあるけど、全体的には綺麗にまとまっていて完成度の高いゲームだと思いました。ぜひプレイしてハンス君を幸せにしてやってください。

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