ズバ抜けたストーリーに酔え! 「バディミッションBOND」

存在はうっすら知っていたけどなぜかアクションゲームと勘違いしていた「バディミッションBOND」。

発売日にTwitterで見た情報でアドベンチャーゲームだと分かり、独特のコンセプトが気になったのでカタログチケットで衝動買いしました。とても感動したのでネタバレなしの感想を書きます。

ゲーム概要

アドベンチャーゲームで捜査をして潜入するというコンセプトが斬新な新規IP。

「ヒーロー」を夢見る正義の警官ルークが彼の元に集まったクセ強すぎワケありすぎ超人たちと奇妙な協力関係を築き、「捜査」と「潜入」を武器に謎の組織DISCARDと対峙する様を描きます。

タイトルの通りバディもので、仲間をはじめ様々な人との繋がりも物語の見どころ。

いいところ

ストーリー

圧倒的で歴史的で絶対的な出来栄え!

今後数年はストーリーがいいゲームは何かと聞かれたら、真っ先に挙げるタイトルの中にバディミッションBONDは間違いなく入るでしょう。

少年ジャンプ的なパワーとスピード感が心地よく、王道と邪道を垣根なく同時に突き進み、キャラクターをゴリゴリ深掘りしながらも冗長に感じさせず、この世の全てを描ききったかのようなスケール感に圧倒され、それでいて分かりやすい。

いったいどれほどの才能がどれほどの努力をどれだけの期間続けたらこんなストーリーを生み出せるのだろう。地球上でこれほど磨き抜かれたものは他に富士フイルムの8K光学レンズくらいしか存在しない。ダビデ像に並ぶ完成度を誇る美しいストーリーでした。

ちょっと漠然としてるので要素ごとに分けてもうちょっと掘り下げてみます。
このゲームはタイトルの通りバディものなんだけど、単にバディものと言ってもその候補が四人もいるとバディの形も様々。

基本は「なんだかんだで行動を共にするうちに、時にいがみ合い衝突し合いながらも最終的にはかけがえのない絆を得る」みたいなバディもののテンプレに沿っているのだけれど、そのバリエーションが6つもあるモンだからもうバディのわんこそば状態だ。次から次へとバディものの良さをお椀に流し込まれ続けて止まらない。

しかも全部味が違う。信頼、悪友、ライバル、憎しみ、果ては母性まで、ありとあらゆる感情と関係性で繋がり徐々に絆を強めていくバディたちから目が離せません。

自分自身が筋金入りのぼっち気質なので絆ってものを押されても正直あんまり響かないのだけれど、このシナリオは描き方が本当に巧みでとても響いてしまいました。響きすぎてぼっちな現実を直視できなくなるほどです。濁りました。


キャラクター単体に関してもその造形は外見・内面ともにあまりにも深く、その描写はあまりにも鋭い。バランス感覚にも優れていて変に落とされる者もいなければ上げられる者もおらず、そしてその魅力は他のキャラクターと交わることで爆発的に膨れ上がります。

序盤はやたらと濃い口でしかも乙女ゲーっぽい味付けに面食らっていたけれど、物語を進めれば進めるほどに繊細で清濁併せ持つ複雑な味わいのトリコになっていきました。
単に脚本が良いだけじゃなくて描きかたや見せ方が本当に上手い。

見えてる伏線の裏で音も無く張り巡らされた無数の伏線を鮮やかに回収していく芸術的なストーリーテリングが絶え間なく驚きをもたらします。


そしてなんといっても幕引きがとてもキレイで気持ちのいい読後感が残ります。続編を意識した妙な引きは残さずキッチリと畳みきり、それでいて絶妙な「語らぬが花のライン」を引いて僅かに余韻を残すワビサビの意識。感服つかまつった。


でもやっぱりまた悪の組織が現れてトラブル起こしてくれないかなって思っちゃうんだよね。まだまだBONDチームの活躍が見たい。大好きだよBONDチーム。

そのた

キャラクターデザインの妙はBONDチームだけに留まらず、脇を固めるキャラクターたちも容赦無くキャラを立たされています。彼らがいるからこそ主人公チームが引き立つ。全員に助演男優・女優賞を与えたいほどに物語を彩ってくれていました。

画面作りだけを見ても、立ち絵がよく動くのはもちろん、体の一部を別のコマでアップにしてみたりパソコンの画面だけを写してみたりと退屈させない作りに好感。漫画とアニメの中間のような演出も楽しいし、なんたって会話パートはフルボイスだ。

そもそも絵がめちゃくちゃ上手い。キャラクターもいいし背景もいい。音楽も盛り上がる場面で必ずかかる曲なんかが特に良かったな。

でもそれらがオマケに感じられてしまうほど、物語自体の引力が強すぎるんです。


最後まで読んだらまたイチから読み返したくなる。

なるんだけど…。


できることならここから先は隠蔽しておきたい。無かったことにしたい。でも向き合わなくちゃ。ゲーム内でそう言ってたし。

わるいところ

甘やかし地獄

ゲームとして甘い。甘すぎる。甘すぎて奥歯がズレるわ涙が出るわ。

今後数年はつまらないゲームは何かと聞かれたら、真っ先に挙げるタイトルの中にバディミッションBONDは間違いなく入るでしょう。


なんといっても難易度があまりにも低すぎます。

その原因の最たるものがヒントが多すぎるというコト。謎解きの量自体はそれなりに多いのですが、同時に山のようにヒントを出されるので解きがいがありません。推理する要素はおろか考える必要すらほぼほぼありません。

プレイヤーを甘やかして甘やかして甘やかし倒す姿勢はバカにされているように感じるほど。開発者は購入者の知能レベルをタコ程度と想定しているようです。CERO C(15才以上対象)なのに。

それゆえこのゲームに障害がありません。自力で難局を突破する達成感が無いのです。キャッチコピーに「真実に迫れ、相棒と共に!」とありますが、真実に迫るのはプレイヤーではなく物語の内容のことでしかありませんでした。

マリオメーカーで作ったブロックを2~3個飛び越えればクリアできるステージを延々やっているような虚無感。横で答えを言い続ける奴と一緒にクイズ番組を見続けるような不快感。そんな感覚がゲーム中ずっとつきまとうのです。

捜査・潜入パート

まずは捜査パート。

わずかにゲーム性があるのはこちらです。情報を引き出せそうなキャラクターでバディを組み、限りある行動力を効率よく配分するというパズルが楽しめます。

ただ、止まったコマで出される三択クイズに面白みはありません。「ちゃんとストーリー読んでましたかテスト」「バディミヲタ度チェック」でしかないのです。三択のうちひとつがおふざけ選択肢であることが多いのでよくシラけられます。

情報の出し方も結構強引なことが多いけど…これはまぁアドベンチャーゲームならある程度は仕方ないかも。

とはいえそこで起こる掛け合いは楽しい。
次に潜入パート。

恐るべきクオリティの低さに度肝を抜かれます。このかっこいいミッションスタート画面がピークです。

なにせ捜査で得た手順をただただなぞるだけでイレギュラーな展開はほぼありません。捜査して潜入するというコンセプトはとても意欲的で惹かれましたが、うまく機能しているとは到底思えませんでした。

ただでさえ予めやることがわかっている上に敵のいないガラッガラのフィールドを好き勝手に移動できるので敵地に潜入している緊張感は無く、ヒント出しすぎで知育玩具レベルの難易度になっている謎解きに失敗できないプレッシャーなどあるわけもなく、なぜ自分で操作をしなければいけないのかと思ってしまうほど全く刺激がありません。ただ、最後の潜入でようやく謎解きっぽくなります。最低限あれくらいの難易度が欲しかった。

さらに潜入するメンバーに誰を選んでも過程も結果も同じというのもつまらない。アマゾンなんかの商品紹介ページでは「誰がふさわしいか考えて適切なバディを選ぶことが重要」みたいに書かれているけど、ウソの情報です。誰を選んでもやることと結末は一緒です。初見では「どのバディの掛け合いが見たいか」以外に選ぶ基準がありません。

時折挟まれる障害物を飛び越えるときや狭いところを通るときなんかにちょっとした自動アクションも何の意味も無くてもはや寒々しい。ストーリーによって引きつけられていた心を引き離す役割を果たしていました。

とはいえそこで起こる掛け合いはやっぱり面白い。

ストーリーを読ませない工夫

ここまででも十分カンベンしてくれってカンジなんだけど、本当に嫌なのがストーリーの邪魔をする要素です。

捜査・潜入の両方において特定の組み合わせでないと解禁されないバディ・サイドエピソードがあるのが最悪。

ストーリーを追うこと以外に楽しみが無いのに、一度だけでもゲンナリするゲーム部分を、しかも同じ話を再びやらなければいけないと思うと失意のルークのような目になります。スキップ機能があるのが救いだけど、捜査パートだけやり直したくても潜入まで最後までやらなくちゃいけないのが濁りの素。

中でも特に気に入らないのがエンディング後にアナザーエンドを解禁するための謎解き。ここに最高の謎解きを入れてくるのが嬉しいやらムカつくやら。なんとなく答えが分かっていてもそれを実行したくないという気の利いた謎解きです。ぜひ勇気を持って決断してほしい。

そしてQTEだ。お呼びでないのにしょっちゅう出てきます。後半になるほどQTEだらけです。

もちろんご多分に漏れず最低の出来で、もし失敗すると出来るまで何度もやらされるタイプの特に最低なやつです。コレが出来ないとヒーローゲージを削られまくって肝心のサイドストーリーを解禁できません。このゲームで最も要求されるゲームスキルはQTE力です。

さらに振動も基本的にビービーうるさいだけで全くセンスを感じません。修正される前のキョダイマックスくらいビービーうるさいと言えばそのビービーぶりが伝わるでしょうか。そういうゲームに限って振動オフのオプションが無い。本当に煩わしい。

これら全てが力を合わせて文句のつけようのないストーリーから気を逸らすのです。


でもここまでに挙げた悪さって、もしかしたら開発陣の優しさから来てるんじゃないか。

ストーリーの良さが分かっているだけに謎解きで詰まって先が読めないなんてことが無いように難易度を下げたんだろうし、本来はウリのハズの捜査や潜入がストーリー自体の面白さに到底敵わないことが分かったからこそ少しでも退屈させないための工夫としてQTEを組み込んだんだと思う。ちょっと裏目に出ちゃっただけで悪気は無いんだよきっと。

なんて。バディミから得た友愛の精神でこう思ってみたりして。

おわり

悪いところもいろいろ書いちゃったけれど、それはともかくストーリーはこれ以上無い出来栄えです。

良質なストーリーを求めるならバディミッションBONDに手を出さないという選択肢はありません。購入特典にハンカチと裏が白いチラシをつけるべきゲームです。きっと想像を軽く超えてきますよ。

ただ、ゲームをやりたい、障害を乗り越える達成感が欲しいのだとすればとても厳しい。ここまで退屈ならゲーム以外のコンテンツとして作って欲しかったという気持ちが強いです。

まぁゲームだからこそ手を出せたのでその点では感謝しています。ひどい内容を押してでも次を読みたい、読んでよかったと思わせる素晴らしいストーリーが引っ張ってくれます。それこそバディ・サイドエピソード全てを解禁してしまうほど。

とはいえ、バディミッションBONDはこのまま終わっていいものではありません。漫画やアニメにメディアミックスしてほしい、いや、するべき作品です。

それが成された途端に大爆発すること間違い無し。NEXT鬼滅はバディミッションBONDです。ぜひNHKがカードキャプターさくら枠でやってほしい。さぁいまこそ受信契約者と手をつなごう。

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