心に28箇所の刺し傷「Detroit: Become Human」 感想

こんにちは、Detroit: Become Humanの記事へようこそ。

私はうらしま、案内役です。それでは早速始めましょう。

——忘れないで。これは、私の感想。


争うつもりはない。話を聞いて欲しいだけだ。

我々プレイヤーはこのゲームによって非人道的な扱いを受け続けてきた。だけど、暴力では解決できないんだ。平和的に話し合い、このゲームの製作者に正義を求めよう。


まず、製作者はリアルな動きを突き詰めることで「動かせるドラマ」みたいにしたいのだろうが、そのせいで操作性が最悪だ。方向転換すらままならない。

細かい動きまでリアルにしようとして逆に珍妙な動きが増えてしまっているし、コントラクトできるポイントにアクセスしにくくなる場面が多発するありさまだ。そのくせ時間制限なんてものを噛ませてくるからストレスは溜まるばかり。

メダマのはずの見てくれの良さも悪い方向に働いている。リアルなわりに行動できる範囲はかなり狭いというのが主な原因で、ちょっとしたオブジェクトにすぐ引っかかるし、道があってもそれはただの背景で通れなかったりする。それが本当に不自然でしょうがない。

QTEも没入感アップのためだと謳っちゃいるが、一人称視点のゲームに慣れきった今そんな小細工で没入感なんか得られない。逆にせっかく没入していた物語から意識が逸れるだけだ。想像してみてほしい。緊迫した場面でコントローラーをブンブン振らされてるプレイヤーの姿を。情けなくてたまらない。製作者はプレイヤーのことを知性の無い機械だとしか思っていないんだ。

さらに言えばヘビーレインの時からリプレイ性が全く改善されていない。相変わらず既読スキップ機能すら無いんだ、今やアイドルマスターシャイニーカラーズにすら搭載されていると言うのに。その上フローチャートのチェックポイントも括りが大きすぎて、様々な結末を見るには非人道的な労力が必要になる。それまでは何度も見たシーンを繰り返し見ることになる。どれだけ面白い話でも短いスパンで何度も見るのは苦痛でしかない。

細かいところでは視点の移動スピードすら変えられないこと、シーンによってはルールの説明もなく追加される遊び、そういったものがプレイ感の悪さに拍車をかける。そうして彼らは我々プレイヤーを奴隷に仕立て上げた。


製作者の傲慢で自分勝手な拘りのためにプレイヤーは過度なストレスに晒されている。我々はもっと自由になるべきなんだ。

我々は争うつもりはない。製作者を傷つけるつもりもない。しかし改善されないのであれば、ここを動くつもりもない。

警部補、変異体(「意思」を持ってしまったアンドロイド)によるデトロイト・ビカムヒューマンのネガティブキャンペーンが世論を動かしています。

彼らの言い分にも酌むべき点があるのは確かですが、このゲームの最も重要な点に言及していません。それは3人のアンドロイドによって紡ぎ出されるストーリーの面白さに他なりません。

いいですか警部補。この3人の物語にはそれぞれにテーマがあり、それらが次第に混ざり合っていくさまが面白いのです。


マーカスはアンドロイドへの理不尽を体感し、憎しみによって変異体となります。そして多くのアンドロイドが不平等や不条理を被っていると知り、行動を起こしました。その先に何を見るのか。行き着く先は人道的な活動家か、それとも凶悪な反逆者か。

捜査補佐アンドロイドのコナーはアンドロイド嫌いの警察官ハンクの相棒となり、急増する変異体の原因究明にあたります。その中で彼は与えられた使命とは相反する選択を迫られる場面に数多く遭遇することになり、そこでどのような道を選ぶのか。

そしてその波間で水面に浮かぶ木の葉のように弄ばれる家事アンドロイドのカーラ。か弱い少女との間に芽生えた愛はシステムのエラーでしかないのか、それとも知的生命の証明か。

この三つの流れがプレイヤー次第で様々な物語に変化するというのがこのゲームの最大のキモなんですよ。


いいえ警部補、「異常をきたした機械が暴走する」なんて話はもう飽きたよ、というのは的外れです。確かに暴走した機械によって人類が混乱に陥れられるという側面もありますが、それはあくまでも一つの側面に過ぎないのです。

同時に人と機械の絆の物語でもあり、プレイヤーに人工知能のありかたを問う話でもあり、ただシンプルに夢のある未来の生活を見せる話でもあり…その無数にあるパーツをプレイヤー自身が組み立てた「あなたの物語」は他のどんな物語とも違う独特の感動を生み出すのです。

やはりこの自分が組み立てるというのがポイントなのか、必然的に自分に刺さるポイントが増えてくるのかもしれません。グッと来るポイントが2471箇所ありました。

初見プレイでどのような選択をしてどんなストーリーを辿り、その結果としてどんな結末を迎えたのかをお友達と話すのもとても楽しいでしょう。


ストーリー以外では特にコナーの捜査パートがイチオシですね。ヘビーレインでジェイデン捜査官のパートが好きだったのであれば、さらに面白くなったハイテク捜査を存分に楽しめるでしょう。ここだけ抜き出して推理モノのゲームを作ってほしいくらいですよ。

しかしアンドロイドは単独で捜査することが出来ないので警部補にも出演してもらう必要があります。警部補?…メチルによる昏睡の疑い。

話をまとめさせてね。2分で済むから、いい?アリス。

このゲームをプレイするとしたら、とにかく操作性の悪さには目を瞑ってもらうしか無いわ。それと全部のエンディングを見るのはチャプター分けの関係で本当に茨の道だということは覚えておいて。

QTEや独特の操作に関してもシリーズ初プレイなら新鮮でいいかもしれないけど、そうでないのなら面倒に感じてしまうかも。


それでもそれらを差し引いて余りある物語の面白さと他では味わえない体験があることは間違い無いわ。意外にも笑いあり、涙あり、ショッキングな場面もありでお腹いっぱい楽しめるの。

以前の作品にありがちだった感動の押し付けみたいなものも少し軽減されていてスッと入って来やすくなっているから、昔の作品で胸焼けしちゃった人にもプレイしてほしいわね。ついでに言うと今回もちょっと納得いかない展開はあるけど、相変わらず勢いでどうとでもなってるから気にしない方がいいわ。

心に残る場面やセリフも多いし、キャラクターもみんなすごく魅力的。だからついつい影響を受けてこんな記事になってしまったのよ。これは私の意思なの。

とにかく引き込まれる物語で全てが許されるデトロイトビカムヒューマン、もしあなたがアンドロイドでないのなら睡眠不足には十分に気をつけてプレイするのよ。寝床は作っておくから。


さぁ、お話はおしまい。ええ、そうよ。明日はきっと、コレを読んでいるあの人が私たちを夢見た場所へたどり着かせてくれるわ。

おやすみなさい、アリス。

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