私は公正で信頼のおける編集長「HEADLINER NOVINEWS」

親愛なるノヴィスタン国民のみなさん。ノヴィニュース編集長のジェニク・ウラシマです。

今日は会社とは無関係に、私の仕事のこと、そして私の目から見たこの激動の2週間についてお話したいと思います。

難しい話題をとりあげるつもりはありませんので、どっかりとソファに沈み、一杯のベターバッズのお共として、気軽に耳を傾けていただければ幸いです。

奇病・遺伝子操作・治安…伝えるべきは?

話を始める前に…昨今急激に勢力を強めている感染症について、みなさんはどう感じていらっしゃるでしょうか。

インフルエンザのようなものだとか、何者かによる陰謀だとか、様々な憶測が飛び交っていました。それに端を発するように治安の悪化や外交、国民皆保険の是非、今や身近なものとなっている遺伝子MODに潜む危険性といった数多くの問題が次々と浮かび上がってきました。

それらの問題に対し、私はこの国を代表するメディアの編集長として、一貫性のある確固たる視点から公正・中立な記事を掲載してきました。ノヴィニュースには強い影響力があり、我々が報じたことは瞬く間に国民のみなさんの耳に入り、世論に多大な影響を与えることは自覚しています。そして世論は国を動かす重要な要素であるということも。

だからこそ我々には常にノヴィスタン国民の益となる情報を伝える義務があり、真実を語る義務があり、正しく問題提起する義務があるのです。それはスポンサーの意向や国家権力であってもねじ曲げることは出来ません。

そのような強い意志を持ち、データの改ざんや事実の歪曲、偏向報道、プロパガンダの流布、ましてや暴動の教唆などといったいたずらに世論を操作するような事には一切手を染めなかったのが編集長としての誇りです。

まぁ…その結果として何が起こったにせよ。

わたしの仕事

さて、長々と情勢を振り返ったり私の信念を語ったりしてしまいました。ベターバッズをもう一杯注いだら本題に入りましょう。ベターバッズは適度に高揚させてくれて、舌も滑らかになるので今の私にピッタリです。たくさん飲んでも依存性が極めて弱いから安心ですね。

ノヴィニュースの編集長といえば大変な仕事と思われがちですが、実はコレといって難しいことをしているわけではないのです。

我が社の優秀な社員は実に様々な視点から物事を捉え、素晴らしい記事を仕上げてくれています。ただ、その視点があまりに多様すぎるために、そのまま紙面にしたのではみなさんの混乱を招くだけです。

そこで、それらの中から特に価値のある記事を選りすぐるのが私の仕事というわけです。要は承認のハンコを押すだけ、誰にでもできる簡単な仕事なんですよ。

ただ、そのハンコの責任に耐えるのはなかなか大変なのです。

先に話した通り、ノヴィニュースは多くの方の目に留まり、世論への影響も無視できるものではありません。

私は会社から数ブロック先の自宅まで歩いて帰るのですが、その道中でみなさんの意見を耳に挟むたびに、贔屓の商店のオヤジの愚痴を聞くたびに、同僚や家族と話すたびに、自分が伝えた情報は真に正しかったものだったのかと自問自答したものです。

紙面には載せない、私個人としての意見もあります。身近な人の益となる記事を載せたくなることが何度あったことか。正直なところ、ノヴィニュースを使って自分勝手な主張を拡散しようとする過激な連中につきまとわれることもありました。破滅願望の強いゲームクリエイターから気味の悪いメッセージが送られてくることも。

しかし、それでも私はそれらに惑わされることなく、本当に伝えるべき記事にのみハンコを押さなければならない。これは本当に堪えます。やりがいのある仕事ではありますが、毎日のように責任に押し潰されそうでした。
そういった仕事に忙殺されるあまり、この2週間はたった1時間程度のことだったかのように思えるのです。

…それどころか…頭がおかしいと思われるかもしれませんが、この2週間を何度も繰り返しているかのような感覚さえあるのです。

しかもその度に違った週末を迎えたり、新たな出会いがあったり、そんな…いえ、大丈夫です。セラピーは受けています。国民皆保険のおかげでね。ただ今はそれほどにプレッシャーのある仕事だということだけ伝われば。

そんな私を支えてくれたのは家族や同僚、馴染みの店、そしてベターバッズでした。特に新しいフレーバーのライムバッズは気分がスッキリするので心の疲れを翌日に持ち越しません。それどころかスーパーフードになり得るほどのポテンシャルを持っているのが頼もしかったですね。

それに…たとえ本当にこの2週間が繰り返しているとしても、私はみなさんに真実を伝え続けるでしょう。

もしも本当にそんなことが起きているのだとしたら、試しに一切の責任を放棄して世界が混沌に包まれる様を眺めてみたい、そう思う人もいらっしゃるかもしれません。

しかし私はそうはしないと断言できます。それほどの責任感とプライドをもって、みなさんに公正で価値のある情報のみをお伝えしている自負があります。それは何度やり直せるとしても変わらないでしょう。

ですからこれからも安心してノヴィニュースをご覧ください。私のプライドだけではなく記者には熱意があり、そしてなにより我らがウォルフ大統領からもお墨付きをいただいている事からも信頼できるメディアであることは疑いようがないのですから。

もしかしたらこの奇妙な感覚は不愉快なレアリス人による遺伝子MODへの細工の影響なのかもしれませんね。強きリーダーウォルフと共に恥知らずの隣人を叩きのめしてやりましょう。声を上げ続けるのです!

おわり

おや、もうこんな時間ですか。名残惜しいですが、そろそろお開きにしなくては。

とにかく、私はこのノヴィニュースの編集長という仕事に出会えたことをとても幸運に思っています。

やりがいがあり、ノヴィスタンはとても刺激的で、魅力的な人々との出会いも数多くありました。辛いこともたくさん起こりましたが、たとえ本当に永遠の2週間を過ごすことになっても構わないと思うほどに、この暮らしが愛おしい。

だからなのか、こうも思うのです。是非みなさんにも編集長としての暮らしを体験してほしいと。まぁ、そんなことは私が昇進するか退社するまではありえないことですが!

さぁ、最後にもう一口ベターバッズを飲み込んだらベッドに入るとしましょう。これは寝つきを良くし、目覚めもスッキリさせてくれますから。二日酔いとも無縁ですしね。

それでは、これからの素敵な2週間と偉大なるノヴィスタンに。乾杯!

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