その恐怖は誰のもの「返校 -Detention-」

自分の行きたい国ランキングの1位常連の台湾を舞台にした台湾製ホラーゲーム「返校 -Detention-」をSwitchで遊びました。Steamでも買ってたのにカブらせてしまいました。ぴえん。

さてこの返校ですが、最初に言っちゃうと最高でした。100点です。しかしそれを存分に語ろうとすると、どうしても多少のネタバレは避けられません。オススメしたいのに出来ないのです。ぴえん。

ということで今回は前半をネタバレ無しの「セーフティゾーン」、若干のネタバレを含む後半を「危険区域」として感想的なことを書き連ねていきますので予めご了承ください。ぴえん。

あとこれも最初に断っておくけど、このゲームの最大のウリっぽい「白色テロ」に関する知識ゼロなのでその辺の考察とかが目的だったらすんません。歴史のレの字も身についてない原始人なんす。ウホ。

セーフティゾーン

演出大賞

まず端的に言ってホラーゲームとしての雰囲気作りがパーフェクト!

そもそも古い学校が舞台と言う時点で鉄板の不気味さなんだけど、それを彩度を抑えて描き、キャラクターは可動する紙人形のような少しぎこちない動きをして、静けさを邪魔しない音楽の中で足音だけが響き、操作するキャラクターとの間に距離を感じさせる画面作り。

その全てがちょっとずつ不安にさせてきて、まだ何も起きてない時でさえ先に進むのを躊躇するほど。もうゲームが始まった瞬間に期待感マックス、スターウォーズの流れる文字を見たときくらいのマックスぶりですよ。初めてやるゲームなのに安心感さえ感じたね。あ、コレ絶対怖がらせてくれるなっていう安心感をさ。


それとこのゲームには購入ページの紹介文にもある通り「冥府の存在」、まぁざっくり「オバケ」が出てきて敵になるんだけど、コレを上手く使ってるんですよまた。

オバケが発するノイズ交じりの、木の板がきしむような唸り声もイイ感じに不気味。2D横スクロールだから先が見えにくくてオバケに気付きにくいのも面白いのだけれど、一番気に入ったのはオバケへの対処法。

それは「息を止めてコッソリ横を通り過ぎる」というもの。いや〜イイね、ゲームでも漫画でも映画でも呼吸が制限されるっていうのは本能がハラハラするもの。対抗できる手段がコレしか無いっていう無力感も同時に演出できるし一石二鳥だよ。


あとは台湾が舞台ということで、貴重なアジアンテイストのホラーになっているので必然的に怖さが独特のものになっています。生活と宗教が密接な雰囲気も相まって、台湾にホラーの舞台としての可能性を強く感じました。


そんなカンジで怖がらせる事に関しては間違いないんだけど、パズルの面ではソコソコだったかも。面白いものも多いんだけど基本的には難易度低めです。ただどうも主人公は狂っているようなので、頭では正解だと思っていても本当に実行していいものかと戸惑う場面はあります。これも恐怖の演出だったのかも?

それとは別に舞台となった時代の歴史的背景を知れる資料的なものがついてくると自分みたいな原始人でもより深く楽しめたかも。でもまぁこのゲームは歴史上の事実とは無関係のフィクションだからな。


ということで返校の紹介でした。これ以上の知識はプレイ前の人民にとって無用である。よってここから先に進む者は共産主義者、あるいは叛逆の兆候がある者とみなし見つけ次第拘束する。

「おわり」まで読み飛ばすなら許可する。


危険区域

ここを読んでいること、誰にも知られていないだろうな。

実はこのゲーム、ある時を境に恐怖の性質がガラリと変化します。ある意味ではホラーゲームですら無いのかも。

最初は外からの脅威を恐れていたのが未知のものへの畏怖へ変わり、終盤には自分自身に苦しみ、痛みを感じるようになっていく。

しかもその痛みはなんとなく予見できるものなのですが、それはオバケと違って回避することができないもの。絶対的に確定している痛みを自ら踏み抜いていかなければいけない恐ろしさときたら…そういう意味ではホラーゲームなのかな。

プレイヤーは次第に物語の真実を察しはじめてどうにか運命を変えたいと思うでしょう。しかし気づいた時にはもう遅い、その頃にはもう既に悲劇へ続くレールの上に乗ってしまっているのだから。

どうかお守りください

この救いのない痛みを生み出しているのは巧みなテキスト群だ。

なに?セーフティゾーンでは怖さのキモは演出だ!みたいに語っていたじゃないかだと?もちろんそれも本当に素晴らしいのだけれど、真に注目すべきはこちらの方だった。

それをセーフティゾーンに書かなかったのは、最初に読んだときにはなんてことない言葉の数々でしかないから。単にその場で起きたことや主人公がその時に思ったことが表示されるだけだ。でも本当はそうじゃない、そうじゃなかった。

あとから思い返したり二周目に再び読むと、多くの場面でダブルミーニング的に、あまりにも遣る瀬ない残酷な言葉の数々で構成されていたことに気付きます。

そんな言葉たちが自分の心が浮き上がろうとすることを阻み、いつまでも、それこそゲームをクリアしてコレを書いている今でさえ暗い水底へと引き込み続けているんです。凄まじい言葉のパワーを感じる。

ここまで印象に残っているのはもちろん演出の妙もある。でも最終的には言葉だ。たびたび出てくる詩も大いに心を揺さぶる会心の出来栄えだし、このゲームは言葉をとても大事にしていてそこで攻めてくる。

紙飛行機が夢を乗せるかは知らないが…少なくとも簡単に消えない不快感は台湾から日本の片田舎まで届いたよ。

つっても元は中国語だし翻訳された言葉ではあるんだけど、きっとしっかりした翻訳なんだろう。PLAYISMを信じるよ。

穢れなき汚れたち

最後にここをどうにかして語りたい。返校の根っこのところだ。

しかし感じたことをそのまま書くと軍人に見つかってその場で射殺されるレベルの大きなネタバレになってしまうのでどうしたものか。書くのやめれば?ぴえん。ほんの少しだけおねがい。

返校はいくつかの、誰しもが経験するようななんでもない些細なことを恐怖の元にしているんだと思うんだよ。しかもそれらはとても清らかで尊いものだとも思う。もちろんこのゲームほど苛烈な体験では無いにしても、どうしてそうするのか、その気持ちはわかってしまう。

わかってしまうが故にこのゲームの狂気を舐め取るように受け入れてしまう。清らかなものが清らかであろうとした瞬間に濁ってしまう。なんで、どうして、見ていられない。

やっぱりコレはホラーゲームじゃないよ。ホラーゲームという名の純文学だよ。


これくらいなら射殺は免れるだろう。


おわり

恐怖を十分に楽しめるだけではなく、テキスト・アートワーク・ひとつひとつの演出、そのどれもが高度に練り上げられている素晴らしいゲームでした。どれをとっても意味を感じ取れてついつい詩人になっちゃうよ。

迷っているならぜひ手にとって遊んでみて欲しい作品です。怖さの質も独自性があり、物語には引き込む力があり、きっといつまでも心に残り続ける一本になるでしょう。自分の心にも深く刻み込まれました。

けど…次はもうちょい明るいカンジの台湾が味わえるゲームをやろうかな!

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